1: 名無しさん 24/05/17(金) 21:19:46 ID:vwcf
天正四五二年 皐月拾漆日
世の争いが始まるどころか、覇と袂を分かつ迄もなかった頃。其処まで遡ったとて無かったのだ。
松本騎馬隊の成し得た、初陣にて手傷無く、戯れもなく、さりとて十を数える三振供養とは。
世の争いが始まるどころか、覇と袂を分かつ迄もなかった頃。其処まで遡ったとて彼より若き侍はいなかった。
二百の号砲成し得た『水軍指揮』村上、またしても伝説を創る。奇しくも騎馬隊が陣頭指揮、松本と其の齢は同じであった。
若き双頭が立ち上がりし頃、番頭を狙う『貢献者』吉村は闘志に燃えていた。かの松本とは歩み、仕えた将も似る。
己は己、彼奴は彼奴。其の眼は真直ぐ豊臣軍へと向けられていた。多くの誉を勝ち取り全国統一へひた走るかの虎を、止めねば。
対するは豊臣が番頭、『似非薙刀使い』青柳である。此の者の髷を刎ねてしまえ。一気呵成、一行が襲いかかると、第一戦線に先ず一房切り離す。
更には第三戦線、『水軍指揮』が全国に轟く十の号砲にて青柳を粉砕。最早髪一つ残らぬ無惨な姿であった。
一方の『貢献者』吉村は松本に続くが如く見事な守護を披露。第五戦線迄僅かな傷すら赦さず封じ込める。
然し第六戦線。敵軍の見事な囮作戦阻止に我を失った西川が第一陣にて突如自爆。
遥か彼方まで届く其の輝きに吉村も、『野生児』丸山も、『孝行息子』長岡も、
『暴れん坊』"押忍成"も、『十刃』"江洲破打"も、将高津も、皆一様に眼を焼かれるのみ。
此の間隙に乗じ、豊臣軍は本陣を突破。戦況は僅かに豊臣に傾きつつあった。
第九戦線、『毬藻男』田口が戻ってきたにも関わらず、城門前にて立ち塞がるは和尚の姿であった。
世の争いを制覇した三年前――和尚は其の地位を"幕賀府"に奪われた。
故に挑む。故に渡さぬ。一度掴んだ此の場所を、二度と渡しはしまい。
和尚の右手からは執念と、勝利へ繋がる光が差し込んでいる。石山本願寺、勝利まで残るは首三つである。
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