カテゴリー: 大谷翔平

いつもと様子が違った。すると、大谷は歩きながら私の方に顔を向けて強い口調で語り始めた。  「僕の（花巻東の）同級生をよく“合コン”に誘っているらしいじゃないですか。そんな人は信用できませんよ」  

私の他に他社の記者が1人いた。  

　突然のことに私は弁明しようとしたが、大谷は聞く耳をもつわけもなく、そのまま歩くスピードを上げて宿舎に入っていった。現在までの取材歴10年間で唯一と言っていいほど、本気のトーン、本気の表情で怒られた一件だ。“大谷番”になって以降、取材を兼ねて花巻東の同級生たちと何度も食事を重ねていたのは事実だった。噂を聞いた何者かによって話が脚色され、“合コン”にすり替わったのかもしれない。  

　大谷に限らず取材対象となる選手のチームメート、コーチ、同級生、家族など周辺から話を聞くこと、いわゆる“周辺取材”は記者の大事な仕事のひとつ。毎日のように1面級の記事が求められる大谷は率先してグラウンド外の出来事を話すタイプではないため、この周辺取材が不可欠だった。  　

ただ、これは全て言い訳になるだろう。

ドジャース・大谷翔平投手なら、もはや天井直撃弾も驚かない？　19日に東京ドームで行われたカブスとの開幕第2戦で大谷が放った今季1号について、アーロン・ベイツ打撃コーチは打球が天井に当たっていたことを映像で確認。「東京ドームの天井に直撃した本塁打のYouTube映像を10歳の子どもが見せ合っていた。でも、天井に当たったことに驚きはなかったね。バットの先に当たったが、入ったことに驚きはなかったよ」と平然と語った。

日本独自の中継映像に海外も熱視線が注がれている。  　野球の本場アメリカでも話題沸騰となったのは、去る3月18日と19日に東京ドームで行われたドジャースとカブスによるMLB開幕シリーズでの一コマだ。いずれの2戦は日本テレビが中継。いまやNPBファンにはお馴染みとなったリプレイを3Dデータ化した自由視点映像「ボリュメトリックビデオシステム」も導入された。

番組では、元メジャーリーグ投手で野球評論家の五十嵐亮太氏が解説で出演。司会の東野幸治から大谷投手の今季の活躍について聞かれると、五十嵐氏は「もう確定ですね！　今年も去年くらいの活躍することは確定です」と言い切った。すると、コメンテーターとして出演した俳優の石原良純は「そうすると、もう投げなくていいんじゃない？と思う人も出てくるんじゃないか」と言うと、五十嵐氏は「そうなんです。最近、そういう話にはなっている。ドジャースが」と明かした。  　

その理由について、「ピッチャーをやることによって疲れでバッターを休まなければいけないとなると、打線の中から大谷選手が抜けることになる。だったら打つ方をメインでやってもらった方が。あれだけの成績を残してワールド・チャンピオンにもなったのですから、ピッチャーやる必要あるのかな？という話にならなくもないですよね」と理解を示した。

――もったいない？  「バックスピンをかけようとするとボールの少し下を叩こうとしますよね。そうすると自分の持っている100の力をボールに伝え切れない現象が起きるんです。だから今は、ボールを100の力で潰しにいく。そのためにボールの下半分ではなく、芯を真後ろから貫く。そういう軌道でバットを振ろうと思っています」

米アリゾナ州グレンデールで行っていた２月のキャンプ中のある日。女性の球団スタッフが髪形を変えてクラブハウスに登場すると、着替えをしていた大谷が手を止めて英語で「今日は髪形が変わったね！」と、わざわざ声をかけた。連日、大谷とは顔を合わせているスタッフとはいえ、チームの看板選手でもある背番号１７から英語で話しかけてもらい、褒められたことがとてもうれしかったようで、顔を真っ赤にしていた。

グラウンド上で両チームの日本人5人で記念撮影を実施。鈴木誠也、山本由伸、佐々木とともに並ぶと、今永昇太がセンターになった。カメラマンが「もっと寄って！　ショウヘイ、真ん中へ！」と大谷に促し、今永も譲ろうとした。  　すると、大谷は「It’s okay. He is older（いいんだ、彼の方が年上なんだから）」と咄嗟に流暢な英語で断り、今永の隣で撮影。年長者を立て、謙虚さが際立つ一部始終をMLB公式サイトの動画コーナー「Cut4」が公式Xで投稿。ファンにシェアした。  　試合後のヒーローインタビューでは「ここ東京で2連勝して本当にいいスタートが切れた。素晴らしい年になるようにまた優勝を目指して頑張りたいと思います」などと心境を明かしていた大谷。豪快なバットのみならず、人柄でも魅了する一幕だった。